コラム⑩ 「タ イ パ 重視」
新聞を読んでいたら、また知らない言葉に出会いました。
「タ イ パ」
“そんなことも知らないのか!?”とお𠮟りを受ける向きもあるかもしれませんが初耳でした。
タイムパフォーマンスの略語のようです。
(日本人の短縮好きも程度問題だと思うのですが)
マーケティングの視点で見ると一般の消費は元より音楽・ドラマ等の楽しみ方もタイパ重視の
傾向が強くなっているそうで、「日本はかつてない高速化社会に突き進んでいる」そうです。
私が鈍感なのかわかりませんが、周りが最近富みに高速化しているとは思いません。
ただ便利な機械が増えたのは事実ですし、少し人間が横着になっている部分はあると感じます。
昨今、仕事・働き方においては“生産性向上”が掛け声ですからタイパ重視は結構なことですが、
プライベートの時間はどうなのでしょう?
やりすぎると窮屈な暮らしぶりになりはしないかと危惧します。
何かに追われている様な、既成概念に縛られ常に誰かの目を気にしている様な時間の過ごし方
は不自然に感じます。
楽しいかどうかよりも損得を優先する姿勢はどうにも肌に合わない気がします。
そもそも時間だけはどんな人にも平等です。
総理大臣も私も1時間は同じ長さです。
仕事においてはその同じ長さの時間を<上手く使うか>/<無駄に使うか>で成果に差が
生まれてきます。学ぶことも同じです。
勤勉、能力開発、成長と言ったものには“タイパ重視”は大事であると共感出来ます。
要はプライベートな時間とのバランスがますます重要なっていくということです。
当世若者気質、若者の声として、「ドラマの間とか情景描写が嫌。とにかく先を知りたいし、無駄
な時間を過ごしたくない」というコメントが紹介されていました。
「そうなんだぁ~」と言う驚きと共に今年58歳になる私としては、「それじゃ、落語はどうなるの?
演劇・歌舞伎はどうなるの?」と言いたくなってしまいます。
それぞれ個性のある演者がその人なりの間で演じるから同じ演目でも味わいが違ってくることが
驚きであり楽しみなわけです。
タイパ重視で倍速で落語を聞いても笑えないし、しみじみと人間の業を肯定することも出来なくなる
と思います。
~余談ですが、ヒット曲のイントロも短くなっているそうです。
サブスクリプション音楽配信の普及ですぐに歌が出てくる“ゼロ秒イントロ”という曲も多いそうです。
海外では再生回数を伸ばすために2~3分の曲が多くなっているそうです。
功利主義と言うか、そこまでいくと音楽を楽しみたいのか瞬間的な刺激を求めているのか
わからなくなります。
「それも個人の楽しみだ」と言われれば詮無いことですが。
何しろ、インターネットの普及とスマホの登場は大変革であったと改めて感じます。
人間の生活形態を大きく変えたわけですから。
生活行動の高速化では外出時間を節約する人が宅配サービスを利用し、調理時間短縮の為の
簡便調味料なるものが年々増えていることでもわかります。
時間の掛かる家事の代名詞である洗濯においても時短洗濯機なるものが人気を呼び始めている
そうです。
タイパ重視で生まれた時間を家族や友人たち、大切な人との濃密な時間に使うのであれば新たに
創られた商品・サービスも浮かばれるというものです。有意義です。
趣味嗜好品にしても業務用の製品にしても何らかの利用目的があるからこの世に生まれています。
当社で扱っている通信・オフィスオートメーション機器は事務仕事の自動化/効率化を目的に
作られています。
そして一流メーカーが作った製品を必要なお客様に提案して差し上げるのが当社の役割です。
良い製品があれば黙っていても売れるほど世間は甘くありません。
特に当社が扱っている業務用のニッチな製品は必要なお客様を見つけるところからはじまり、
最適なシステムの提案→契約→施工→アフターフォローとお客様との長く密な関係を構築する
ことが求められます。
タイパ重視を逆行するようなことも多々あります。
業務用、そしてお客様ごとの最適提案が千差万別であるがゆえに対面でのアナログな部分が
どうしても必要な場面が出てきます。
私はそこが営業の醍醐味だと信じています。
仕事を通して色々な社長と仲良くなれる素晴らしさが営業にはあります。
濃密な人間関係を築くのにタイパは合いませんね。
時代の変遷、外部環境の変化に適応しつつ自社の良さ・固有の役割を強くイメージしてお客様と
向き合います。
以上
│更新日時:2022/09/16│