コラム⑪ DX/リスキリング、それと・・・
2020年10月の世界経済フォーラムは今後の技術進展で従来の仕事の8,500万が失われると発表しました。
その他にも「今後無くなる職種ベストテン!」と言った能天気なのタイトルで興味を引こうとする雑誌も
多いように感じます。
一方、世界経済フォーラムは今後新たに生まれる仕事の数は9,700万とも言っています。
「差し引きすると1,200万の新しい仕事が生まれるんだ!」と一安心したいところですが、もちろんそこには
条件があります。
それが新しいスキルを身に付けること=「リスキリング」になります。
岸田首相も所信表明演説で成長産業への労働移動を促すリスキリング支援に5年で1兆円を投じる計画を
打ち出しています。
また、教育・学習分野の会社(リクルート、ベネッセ等)も一大商機と見て様々なメニューを用意している
ようです。
まさに国を挙げてのリスキリングブームと言った趣です。
リスキリング1兆円パッケージの定義が、「就職後に改めてスキルを高めた人材が成長分野に移り、生産性を
高めて賃上げにつなげる好循環を狙う」とあります。
誠にごもっともと感じますが、例えば自分の会社で採用した人材が会社なり個人で投資をしてリスキリングを
実践しスキルが高まったところで、「社長、実力が付いたのでより自分を生かせる、そして給料の良い会社に
転職します」と言われて素直に良かったねとは言えない気がします。
そもそもなぜ日本でも大企業を中心に多くの企業がリスキリングに取り組んでいるのでしょうか?
目的は何なのでしょうか?
専門家によると、「今、全ての企業に求められているのが“新しいビジネスをつくること”であり、それを実現
するにあたりデジタル活用が不可欠になっている」ためと指摘しています。
従来、企業は既存の事業を成長させるために働き方改革による生産性向上やデジタル技術を活用した業務改善
に取り組んできたが、コロナ禍に直面し社会が一変したことであらゆる面での変革が求められているためとも
解説しています。
要は今までの延長線上の改革では今後生き残れない。全く新しいビジネスモデルを構築して、それを実現する
ためのデジタル活用が必須になる。従来のスキルしかない社員では企業の存続さえ危ぶまれるとの論調です。
加えて、「人事部門だけ取り組んでも効果は期待できない。組織横断する専門部署をつくるべき。
その上でDX推進戦略に基づくリスキリングが必要な職種を定義しレベル設定を行う必要がある」
「リスキリングで求められているデジタルスキルの習得は従来の様に現場で習得することは出来ない。
なぜなら、今必要とされているデジタルスキルはこれまで会社に無かった仕事、これから生まれる仕事に
必要とされるスキルなので社内の誰も教えることが出来ない」との解説を聞くにつけ他人事の感が強くなって
しまいます。
まさに、「人事部門が無い中小企業はどうすれば良い?」
「結局、大手の教育・学習専門コンサルに頼むようなの?」
そんな素朴な疑問が湧いてきます。
国内企業数の99%を占め、雇用の約7割を生み出す中小企業に必要なリスキリングとは何か?
これを考えなければならない。
リスキリングで求められる職種の代表的なものが「データサイエンス・分析、AI・機械学習、デジタル
マーケティング」だそうです。
どの会社でも今後必要になる仕事だとは思いますが、大企業と中小企業ではその役割の違いから自ずと
取り組み方が異ってくるように感じます。
大企業はグローバル市場で勝つためのデジタルスキルが求められる。競争で優位に戦うための新しい
ビジネスモデルづくり、そのためのリスキリングは必須になるでしょう。
翻って我々中小企業は従業員幸福を実現するための働き方改革、リスキリングに取り組むべきでしょう。
特に地方の中小企業は深く地域に根差し、行政とは違う形で地域を維持・発展させる役割を担っています。
それが我々の存在価値でもあるし、そのためのリスキリングを一人ひとりの中小企業家が考えるべきです。
デジタル活用は従業員幸福を実現するための道具として扱うのがメインになるでしょう。
もちろん中小企業は新しいビジネスモデルをつくらなくても良い訳ではありませんが、今言われている
リスキリングは規模・地域性の観点から見ても中小企業にはマッチしない点が多いと感じます。
2018年に投資の専門家から教えてもらった言葉を思い出します。
「働き方改革はオフィス概念の改革になる」
顧客満足から従業員満足へ。
そしてこれからは“従業員幸福”というステージに入っていく。
「優しさに秀でる人が優秀とされる時代になる」
学力、能力が重要視されない時代が来る。
なぜならテクノロジーが代替するから。
人間しか出来ないこと。人間の正しい感性が求められる時代が来る。
テクノロジーが正しい優先順位を維持する。
今まではわかりやすさが優先順位を変えていた。
例えば、 (個人) お金/幸せ
(会社) 利益/理念
( 国 ) 経済/人権
どちらが本当に大事なのかは皆わかっています。
なのに環境、事情、短絡的な思考等で正しい優先順位を変えている。
暮らしていく中ではきれいごとでは済まされない、正しい優先順位とは違う判断を迫られることも
あります。
ただ、本当に未来のテクノロジーが正しい優先順位を維持してくれるなら、今よりもっとお互いが分かり
合える、素晴らしい世の中になるような気がします。
効率ではなく、人に良い影響を与えてくれるテクノロジーに期待します。
良い会社とは良い社風を持っている会社のことだと学びました。
数字では計れないもの(形而上)を大切にし、人間尊重経営を土台に社員との共育を実践する
我々の自主性、主体性が未来のテクノロジーを活用する前提になると感じます。
成人の学には人間学(徳性を養う)と時務学(知識・技能を養う)の二つがあると学びました。
古典「大学」には、本学(理念、目的、背景)は人間学で末学(手段、手法)が時務学であると
書いてあるそうです。
日本流で行くと不易流行でしょうか。
人間の正しい感性を磨く本学=人間学こそリスキリングしなくてはならない気がします。
以上
│更新日時:2022/10/24│